象の耳 歩み

第2章~19話:完全なる偶然の産物①

2005年9月。
ついにF社のテストキッチンをお借り出来る日が来ました!

F社に着いてFさんと合流。
テストキッチンの中は学校の教室位の広さがあり、その中には見た事もない最新鋭の機械がずらっと並んでいました。

Fさん「私、これから別件で打ち合わせがあるので部下を6人用意しました、二時間この部屋を確保してあるので彼らを使ってどんどん時間いっぱいまで実験してみて下さい!

じゃ!」

と言ってFさんはどこかへ。

見知らぬ6人の方と見知らぬ機械に囲まれて一人呆然と立ち尽くす・・・
う、、うそだろ・・・

とりあえずここ数日に考えていた、こんな機械があったらこんな実験をしてみよう!なんて色々考えてはいたのですが、実際にそんな機械は無かったので全ての準備が無駄に終わりました。

なので、頭の中で話しを元に戻し問題はA製法(第2章~10話:進化、参照)の改善なのですからA製法の改善方法を教えてもらおう!瞬時にそう決定し、まずはA製法の前に以前の作り方で皆様に象の耳の試食をして頂きました。

全員が初めて見る作り方のパンだとおっしゃって下さりました!
そして食べて頂く。
「美味しい!」と目を輝かせて言って下さったのは本心なのか仕事の営業トークなのかは私には判断出来ませんでした。

そしてこの当時の問題点を説明し、次に最近開発したA製法で生地を作製し食べて頂き、同時に欠点も説明しました。
問題点と欠点を次々と説明されれば誰だって美味しくは感じなくなるでしょう・・・

なるほど~・・・的な声が漏れました。

そして今回、自分が来た理由と目的を伝えました。

「さあ、皆さんのお力を貸して下さい!このパンの欠点を克服するにはどうしたら良いですか?もっと美味しくするにはどうしたら良いですか?」

全力で聞いてみました。
自分からしてみればここにいる6人はFさん同様のプロ中のプロ、パンの神様のように方々な訳ですから聞けば何でもお答え頂けるものだと思っていました。

そして返ってきた答えは・・・

「その製法のパンを見るのも食べるのも私達は初めてなのでお力になりたいのですが、すぐにどうこう出来る問題ではないですね・・・」

絶句。

ここに来れば答えがあると思っていました。
ここに来れば誰かが何かを教えてくれるのだと思っていました。

泡を吹いて倒れそうになりました。

甘かった・・・
ここまでで30分経過。
残り90分。

静まりかえるテストキッチン。

スタッフさん6人は私からの指示がないので動くに動けず全員が指示を待っている・・・

集まる6人の重たい視線・・・

静かな空間・・・
微かに響くエアコンの音・・・
突き刺さる重圧。
残り90分。

逃げ道なし。
冗談を言える雰囲気ゼロ。

雑談すら許されない緊張感の中で汗が、背中をつたい脇からあふれ出るのを感じました。

困った。完全に困った。
まじで困った。
本当に困った。

ここに来ればみんなが打開策をぽんぽん出してくれると思っていたのですが、初めて見る製法のパンの打開策など誰も思いつく訳がないのです・・・

甘かった・・・

指示を待つ6人の視線は、ずっと私の口元を見つめ、私からの発言を待っています。

うわ~どうしよ・・・

脇とか額とか背中とか、いたる所から嫌な汗が垂れまくってます。

すでに帰りたい・・・

一呼吸置いて、周りを見回す。
この人達はする事がないから自分を見ているのだ。
そうだ、何かをしてもらおう!指示を出してみよう!

周りには見慣れぬ機械が沢山あったので、これはどんな機械なんですか!?あれは!?どうやって使うんですか?なんて苦し紛れに周りの機械について色々質問してみました。

ようやく時が動き出し、スタッフさん達が色々と丁寧に説明して下さりました。
そしてある機械Xの時は、自社製品だったようで他の機械以上に得意げに紹介して下さりました。

聞きながら、、、せっかく来たんだから、一通りの最新鋭の機械を使わないのはもったいないよな~なんて思いながら、その説明を聞いてるうちに、その機械Xの素晴らしさに驚く!

え、そんなにすげえの?
まじっすか。

沈黙と重圧逃れの為にその目の前の機械Xを試しに使わせてもらい、再度、生地を試作!そしてA製法でも試作!

結果やいかに!!

つづく