象の耳 歩み

第3章~15話 リピーターを増やそう!<3、世界初製法の呪縛>

生地の改良は進みつつあるものの、ポスター類は全部作り直さなければいけないし・・・
しかもキッチンカーを1台増やし2台となりまして、フランチャイズも大阪と宮城に一店舗づつ出来たので生地の製造面の問題も少しづつ出てきまして・・・
(フランチャイズと大量生産のお話はまたあとで)

日々~お客様はいらして下さるので大量の生地を作り続けなければいけないし、ポスター類も全部作り直さなければいけないし、でも電話やら問い合わせのメールの対応やら様々な企業さんの応対とかフランチャイズの加盟の問い合わせとかキッチンカー2台や各店のトラブルの対応とかHPの更新やら何やらで頭の中はパニックでした。

この頃は毎日18~20時間位働いて、そのまま机で寝るかたまに帰ってちょっと寝て出社みたいな日々。
勿論休日なんてありませんし、むしろいらないって感じでした。

テトリスを延々とやってる感じといいますか。

そして吉田羊さんのご来店の数日後。

高井戸店は対面販売なので商品を渡してお客様がお帰りになるのを見送ったら自分はすぐに工場に戻るのですが、外のうちのベンチで焼き立てを召し上がって下さる方も多く、その会話がたまに工場の中に聞こえてくる事があるのですが・・・

「これが世界初製法のパンか~」
と話ながらその女性のお2方は象の耳を召し上がって下さっていたのですが、

「なんか普通~・・・」

「う~ん、ちょっと期待しすぎたね・・・」

「世界初ってほどの衝撃は無いよね・・・」

この時、この会話を聞いて色々な謎が解けたのです。
なんで7ヵ月も連続でテレビ取材が来たのだろう!?
常々疑問に思いつつ後回しにしていたのですが・・・

恐らく・・・ですが、
「世界初製法のパン」
という珍しい呼び名のおかげでテレビの取材が来る→

その放映を見た方が凄い期待をしてお店に来る→

しかもお持ち帰りの生地は硬い→

焼き立てでも想像を越える衝撃はなく意外と普通→

がっかり・・・

(一応言っておきますけど、熱烈なリピーターも少なからずいましたからね!)

莫大なリピーターが生まれない原因は、生地の問題だけでなく、期待を煽りすぎる「世界初製法のパン」という呼び名も原因の一つかも!!

キッチンカーで売りに出ているスタッフに聞いてみると確かにお客様がそんな事を言っているのを聞いた事がありました・・・
という声もあり、どうやら全員に心当たりがあったようなのです。

「世界初製法のパン」この言葉に嘘偽りはありません。

特許も取ろうと思えば取れます。
(取らない理由は、特許を取得するとレシピと製法を世界中に公開しないといけないからです。しかも改良する度にレシピを更新しないといけないのですが、更新料も安くはなく・・・コカ・コーラと同じで商標だけ取って特許は取らない事にしております)

ですが、この名前に商品が負けていたのかもしれないのです。
改良が終わっても硬くなるのを伸ばせただけで焼き立ての味と食感は劇的には変わりません。

「世界初製法のパン」って呼び名、変えるか・・・

となると、

新しい呼び名を考える→当然、看板は全部作り直し!&ポスター類も全部作り直し・・・

新しい呼び名ってどうすりゃいいんだ・・・

新しいポスターってデザインとかどうすりゃいいんだ・・・

当時いたスタッフにはデザインが得意な者もおらず、
マーケティングに精通した者もおらず、
今までどおり結局自分がやらなければいけないのですが、
これらを一人でこなして更に「今ある全てのもの」を越える生地や掲示物などを作らなければいけないのです。

今まで全力で作って来たものを越える生地やデザインをOPENして1年も経っていないのに作り直さなければいけないなんて・・・

自分もデザインに関しては本と周りの物から勝手に学んだいわゆる独学です。
もう素人が頑張ってどうにかなるものではないレベルの話な気がしてきまして。

「もう無理だ、プロにお願いしよう・・・」

全部作り直しです。リニューアルって奴ですね。
普通そういうのって物事がうまくいっている場合はやりません。
やる必要がないですし、やって失敗したら最悪ですから。

何かの理由で「新しく」する必要が出てきたからリニューアルする訳です。

こんな理由でOPENして8ヵ月で・・・
周りから見ればあれだけテレビに出てお客様が殺到していたのに、
「象の耳」にはリニューアルが必要となったのでした。

<つづく>