象の耳 歩み

第32話:なんで売れないの!?

え、何で全然売れないの?
こんなに美味しいのに!

売れない理由がわからず、購入しないのはお客様に見る目がないのだ!
と思い込んでしまいたくなる位に落ち込みました。

泣きながら帰った営業初日。家に着いたら23時半。片付けしたら1時。

時期は7月、外はかなりの暑さです。
営業中の車内の温度は目の前に高温の油がある為に45度位でした。
(今の販売方法と異なり、当時はご注文を頂いてから
生地をお客様の目の前で伸ばし、それを揚げて提供してました)

とにかく暑いのです。車の外に出ると真夏の昼間でも涼しい!と思ってしまう位に。
何もしなくとも、車内にいるだけで体力がどんどん削られていきます。
とにかくきつかったのを覚えています。
学生の頃に空手道部で体を鍛えていたから耐えられたような気がしてます。
じゃなきゃ倒れていたと思います・・・

なのでしっかり体を休めないともちません。
翌日は朝7時位には起きて営業の準備(仕込みと呼ぶ)
を始めないといけない為、ご飯を食べて、お風呂入ったらもう寝る時間です。
営業初日の大ショックの次の日も・・・目覚ましが鳴ると仕込み開始→出発、
着いたら準備して営業開始~

以降は、ライブの日だけ営業を休み、
スタジオのある時はそれに合わせて早めに営業を終え、
毎日休み無しでこんな生活な為、ゆっくり売上を上げる為にどうしたら良いか?
なんてビジネス書を読んだりネットで研究する時間などまったくありませんでした。

しかし、お客様が来ない暇な時に、ぼ~っとしてるのも時間がもったいない為、
外に出て車を眺め欠点を探したり、
通りすぎていく人達の目線や、会話を盗み聞きしながら、

お客様は何を求めているのか?
どうしたら車に目が止まるのか?
どうしたら購入しようという気持ちになるのか?
等を自分なりに考え結論を出してみては
出来る範囲内でちょこちょこと看板やらをマイナーチェンジ。

夜中にパソコンで看板を作り直し、ラミネートして貼り直すだけなので、
毎日改善を繰り返しました。

→店を営業している側の視点ではなく、
お客様の視点で店を眺めると色々と見えて来る事に気づく!
俗に言う客観視ですね。

「パン」って看板に書いてあるのに、
「象の耳って何ですか?」
「ナンですか?」「ピザですか?」よく聞かれました。
全員が全員、看板を読んでくださる訳でもない事にも気づきました。

また見辛い看板はスルーされます。

「わからない事があった時は人に聞く前に自分で調べて、
それでもわからない時に初めて人に聞く。」

のが当たり前だと思っていた自分には、
看板を読みもせずに質問してくる方を見て非常に当時は驚いたのですが、
それは当時の自分が世間を知らなかったからですね。

→そう、全ての基準を「自分の価値観を基準」にしていたのが間違いでした。
独り善がりの看板。一人称な営業。

物を買って頂く為に店を開いているのに。

俺は日本初のパンを作って売ってるんだ!
珍しくて美味しいんだ!
うちでしか食べられないんだぞ!

若干、上から目線で商売をしている自分に気がつきました。
そんな店にお客様がいらっしゃる訳がありません。
すぐに考えを改めました。
自分の考えの甘さに気づきピアスも迷わず全部外しました。

看板は見やすくてわかり易くて、文も短く!インパクトのある言葉!
美味しそうに見える写真!写真を撮っても加工も大事!
有名チェーン店の看板を見て、
プロが作ってるんだな~と改めてその凄さがわかりました。
やはりどうやっても素人臭いんですよね・・・自分が作ると・・・
それを味といえば良いのかもしれませんが、
下手なのと味は別物ですから、、、センスが問われます・・・
こうやって差が出るんだな~と痛感。
看板類は自分なりにチェーン店を研究したり、
お客様や友人知人が買いに来てくれた時に意見を聞いてとにかく何度も作り直しました。

毎日営業をしていると様々な方がいらっしゃいます。
そして世の中には本当に物凄く色んな価値観をお持ちの方がいる事も知りました。

過去に色々な接客業をしてきましたが、何処も屋内でした。
その店にはそれなりにその店に合うお客様が来るものです。
接客する対象は「店にいらした方」でしたが、
外で営業をすると対象は「外にいる方全員」になります。
当たり前といえば当たり前なのですが、
世の中には良くも悪くも色んな人がいるな~とつくづく勉強する事が出来ました。

購入しないのにひたすら話しかけてくる方や、
試食を出せとせがむ方(そして食べるだけ食べて絶対に購入はしない)、
どう接して良いのかわからない感じの方も多かったです。
そして衝撃的な一言を、ある女性のお客様に言われた事がありました。
開業して間もない頃、あれは忘れもしないダイエー鴨居店さんでの営業時。

恐らく高校生と思われる女性のお客様が御来店。

リピーターになってもらおーと、はりきりました。
珍しがっていましたし、どうやら興味深々のようで、
「何処の食べ物なんですか?」「私、はじめて見ました」「なんで象の耳なんですか?」
「アメリカのオレゴン州で見つけたんですよ~」なんて雑談をしながら、
お客様の目の前で生地を伸ばしました。

当時は、注文を受けてから生地を伸ばしてから揚げていたので、
サイズは調節可能、小200円、中300円、大400円で、
その時は「小」のご注文を頂いたのですが、
喜んでもらえると思いサービスでオレゴンのエレファントイヤーと、
同じ大サイズをお出しすると・・・

「え、こんなに大きいの!ってかデカすぎ~!ある意味超迷惑。食べきれな~い」
と言われてしまったのです・・・

頭を金槌で叩かれたような衝撃でした。
自分が良かれと思った事がここまで逆効果になるとは!

オレゴンのエレファントイヤーと同じサイズを再現して出したのに、
大きすぎて迷惑!なんてことでしょう!

そう、お客様の大半はエレファントイヤーの事を知らない訳で、
それをリアルに再現した所で嬉しくも有り難くもなんともないのです。
払った金額に見合うだけの商品価値(味、量、金額)があればいいのです!

考え方も変えないとまずいと気づき、
毎日、少しづつ看板や掲示物をどう直したら良いか考え出来る事は即実行。

毎日毎日、営業を行い、
毎週毎週、同じ曜日に同じ場所へ行き、
お客様と直接話しをして、意見を聞いたり、
仲良くなったお客様には思い切って、
どうなったらもっと売上が上がるか?なんて軽く相談してみたりして、
思いついた事は全部やりました。

時間が無いから、無いなりにその中で自分で改善方法を考え、
結果として恐らく本では学べないであろう事を沢山学べた気がしました。

こうしてリピーターが少しづつ増え、少しづつ売上が上がりました。
労力と売上が比例しているとは思えなかったですが、
それでも美味しいと言って、毎週買いに来てくださる方が少しづつ増えると、
いつかはなんとかなるんじゃないか?なんて思えてきたのでした。

そして転機は本格開業して3ヶ月後の10月に起きました。

つづく