象の耳 歩み

第34話:進化

家具屋さんでのお祭り営業で私は、
今までうっすらと気づいていたのですが、
気づかなかった振りをしていたものも合わせて
この食べ物の致命的な弱点を3つも発見してしまいました。

その3つとは・・・
1つ目。
当時の象の耳は注文を受けてから
①生地を伸ばし、②揚げ、③トッピングをつけ、④提供となる訳ですが、
1枚作るのに全部で約4分。

一人のお客様が4枚買おうとしたら単純計算で16分もかかってしまいます。
また次のお客様が何枚か買おうとしたら、
行列の後ろの方はいったい何分待つ事になってしまうのでしょうか。

実際にこないだのお祭りでも、
待ちきれずに沢山の方が帰られてしまっていたのです。
待ち時間が長すぎる。これは問題です。

2つ目。
私しか作れない。
レシピは誰にも教えていないし、
それ以上に生地を伸ばすのには相当な技術がいります。
上手くいって事業を拡大しようとした時にこれでは拡大出来ない!
これも問題です。

3つ目。
揚げ物ゆえ、冷めたら美味しくないのは始めから分かっていました。
しかし、スーパーの店頭で販売するにあたり、
スーパーのお客様はほとんどの方が買ってすぐに食べるのではなく、
持って帰って家で食べようとするのです!(これは完全に予想外)

テイクアウトされた冷めた象の耳。
ベストの状態じゃない象の耳を初めて食べる方が、
「象の耳って美味しくない」
って思ったら、その方は二度と象の耳は買わないでしょう。
時間がたったら美味しくない!
これも相当問題です。

以上の3点を克服し、
今以上に商売を軌道に乗せる為には!(軌道に乗る=楽できる)、
いや!それ以前に!軌道に乗せないと自分の人生に先がない!!

→「更に改良しないと駄目だ!」という結論になりました。

がっかりする暇があったら、改良しよう!

という訳で、
私は家具屋さんのお祭り後、更なる高みを目指し
改良と研究の為に営業を減らし
再び粉まみれの引きこもり生活を始めました。
収入が減る分、生活は苦しくなりますがあとで取り返せばいいだけの事です。

入れる材料の成分と役割、それを何の為に入れるのか?
本当にこのパンには必要なのか?
一から専門書をとりよせ徹底的に研究し直しました。

そして、
約2ヶ月の研究のすえに新しい生地と新しい製法を思いついたのです!
<これを以降、A製法とします>
いったい何度目の改良でしょうか(笑)

今までは・・・生(なま)の生地を車に積んで販売していたのですが、
生地って奴は常に酵母(こうぼ)が醗酵(はっこう)しており
ベストの時期をすぎると今度は過発酵といい、
醗酵しすぎ、つまり腐って行くのです。

しかも移動販売車の営業は外なので、
気温がもろに生地に影響を与えます。
夏は暑い為、醗酵速度が速くなり、
冬は寒い為、醗酵速度は遅くなります。

なので生地も菌の量を変え、1日の前半用と後半用で二種類用意して持って行っていました。
前半用の生地が過発酵を起こした場合は、味が落ちるので後半用にチェンジ、
前半用は廃棄となります(涙)
営業終了後に余った後半用の生地も翌日には使えないので当然廃棄。
生地って朝起きて捏ねてたのですが、かなりの重労働・・・

これでいったい今までどれほどの生地を捨てた事でしょう・・・

だが、このA製法をやる為には、
ある設備を家に置く必要があり、
その設備を置くには広い部屋に越す必要があり・・・
そして車も塗装の剥げた汚い車ではなく、
出来るだけ綺麗な車じゃないとイメージがよくない!
となると
引越し費用 + 設備の購入費用 + 車の改装費用
が必要になります。

しかし、この新しいA製法ならば、
今までの半分の時間で提供が可能になります!
つまり売上は倍!
素晴らしい!
そして2(私しか作れない)に関してはクリアの糸口が掴めた感じ。
3(冷めたら美味しくなくなる)に関しては若干の進歩あり!

ただし・・・ちょっと別の欠点もない訳じゃないのですが・・・
でもこれなら大丈夫なんじゃないかな・・・

よし行ってしまえ!怖いが前進しよう!
いけるぞ!自分の進む道は正しい!

この時は疑いもなくそう信じていました。

<つづく>