2021.11.11 第1章~6話:影の総帥

まさかの地図間違えで路頭に迷い、何の収穫も得られずに半泣きで屋台会場に戻ってきたのですが・・・

この日にはもう一つの希望があったのです!

そう、今日は全6店舗をしきるオーナーが来るはずの日!

日本の屋台やテキヤさんといえば、ヤク○さんの影がちらつく印象がありますが・・・
アメリカも屋台と言えば・・・・マフィアとかギャングですか!?

今日、会えるはずの象の耳の総元締めは、つまりは影の総帥。
もしかしたら象の耳の作り方を知る為に来た自分にとっては師匠になるかもしれないお方なのですが・・・

マフィア?ギャング?
いったい、どんなお方なのだろう・・・??

恐らく家の周りには、黒のスーツにサングラス、マシンガンをもった部下が囲い、家ではバスローブを羽織り、膝の上にはシャム猫。

指には巨大な石のついた指輪をし、ブランデーグラスを回しながらコニャクの香りを楽しみ、机の上には鏡と大量の白い粉。そしてもちろん口元には極太のシガー。

人を見下すような目で見て微笑みを浮かべた瞬間には裏切り者をバットで殴り殺す・・・

まるでマーロン・ブランドかロバート・デ・ニーロのようなマフィアを想像。

そんな人に自分は弟子入りするのでしょうか?
自分までマフィアにならなければいけないのでしょうか?
ちょっと嫌だな・・・

そんな事を考えながらも~

屋台で働いている人がもし昨日と違っていたら何か情報を引き出せやしないかと考えたのですが、どこも昨日と同じ人達でした(涙)
ですよね・・・

昨日さんざん喰らいついたので向こうも自分を覚えていたらしく~
「材料は何ですかね~?」
「卵は入ってるんでしょうかね~?」

なんて聞いてみても~答えはやはり、
『知らない』の一点張り。

そりゃそうですよね、生地を仕入れて揚げてるだけなんですから。

「今日ってオーナーさんが来るんですよね?何時くらいに来ますかね?」

『あそこにいるよ』

えっ!?

指をさす店員。もう師匠とご対面!?早すぎ!!
こ、こころの準備が出来てません!!

し、しかし私は師匠にあたる方を見てみたいという衝動に駆られ、すぐさま振り返ってしまいました!

いったいどんな渋いマフィアが待ち受けてるのか・・・・???
しかも初マフィア!!

そして・・そこにいたのは・・・

ポメラニアンを抱えた、
推定年齢60歳位のしわくちゃで、おまけに身長150cmくらいの小さなおばあちゃんだったのです!!

「えっ!?あの人がオーナーなの!?(ってかヨーダじゃん・・・)」
(ちなみにヨーダとはスターウォーズに出てくる小さいけどすごい宇宙人)

『そうだ。』
ならば、行くしかない!
近づいてみる。

「あの・・・・」

覚悟を決めてヨーダに話し掛けるとヨーダは、びくっ!!として振り返り私を見上げました。

「エレファント・イヤーのオーナーさんでしょうか?」

『あ~そうだけど・・・なに?』
とっても怪訝そうな表情で睨まれました。

「どうしても、家で作って食べたいので象の耳の作り方を勉強しに来たんですが・・・・」

その時!!
最後まで言い終えてもいないのにポメラニアンを抱えてヨーダがテケテケと逃げ出してしまったのです!!

「待て!ヨーダ!!」

手を十字に広げ通せんぼをして周りこみ!

「これの作り方を勉強する為に日本からわざわざ来たんです!お願いですから生地のレシピをご存知でしたら教えて下さい!私に教えても、あなた達に迷惑はかかりませんから!それか、お金はいりませんからあなたのお店で働かせてく・・・」

またもや最後まで言い終える前に!
ヨーダは別の方角にテケテケと、ポメラニアンを抱えて逃げ出してしまったのです!!

また周りこもうとしたその時!!

ヨーダの手が、しっしっ!あっちへ行け!ってやってたのです。

あまりのショックで呆然と立ち尽くしてしまいました・・・

そしてヨーダは人混みに紛れて姿をくらませてしまいました。
最後の手がかりが消えてしまったのです・・・

借金までして!!
象の耳の作り方を知る為にわざわざポートランドへ来たのに、3日目にして全ての可能性が消えてしまいました。
これからどうしろと!?

途方に暮れるとは、きっとこういう事を言うのでしょう。

つづく

あげ焼きパン象の耳へのお問い合わせはこちら
上に戻る