2023.1.10 第2章~17話:転機

その突然かかって来た電話というのは・・・

当時、私は材料の粉をネット通販で購入していたのですが、そのサイトに入会する際に個人情報の記入で職種欄を「パン屋」と登録していました。

その登録欄を見たそのサイトの会社の営業の方が、うちを町にある普通のパン屋さんだと勘違いしたらしくある商品を勧める営業電話を突然してきたのです。

「○○製法ってご存知ですか?最近こんな新商品があるのですが、お店で扱ってみませんか?」

○○製法。はじめて聞く製法です。
普通のパンというものは、
1:生地をミキサーで捏ねて、
2:発酵させ(1回目)、
3:作りたい形に整え、
4:また発酵させ(2回目)、
5:最後に焼いて完成となるのですが、

この営業の方が電話してきた○○製法のパンは、
上記1〜5の作業を大幅に短縮できる画期的な製法らしく・・・

しかしうちは普通のパン屋じゃないし、普通のパンを扱う訳にもいかないのでお断りしようと思った瞬間
それらの単語を組み合わせた結果、今までの悩みが一気に繋がり頭の中で閃きが!

<今だ!このチャンスを逃しては絶対にダメだ!>

「あの~、○○製法ではないんですが、なんとなくそれに近い感じのパンを逆に作れるようになりたいのですが、どうしたら良いでしょうか!?」
「当然難しいのは重々承知していますが、どうしても知りたいのでなんとかならないでしょうか?」
「これがわからないと自分は頭がおかしくなってしまうかもしれません!」
「大変申し訳ないのですが、助けて頂けないでしょうか!」

すごく無茶だととわかりつつ、駄目元でゴリゴリに喰らい付いてみました。
おもちゃ売り場で地面に寝転がって泣きながら駄々をこねる子供以上の悪あがきをしました。

当然、その電話の主は当然、

「・・・・」

となったのですが実は自分は町のパン屋ではなく、移動販売者1台で揚げパンを売っているしがない業者で、そして今はこんな悩みを抱えてるのです!
と、延々と心の憂さを晴らすがごとく喋り倒し、今の私を救えるのはあなたしかいない!だからその製法を勉強したい!とゴリゴリのゴリ押しで攻め続けると・・・

「・・・では、ちょっと心当たりがあるので当たってみましょうか・・・」

なんて素敵な事をおっしゃってくれたのでした!

そして翌日、その方から本当に再びお電話がありF社の方に話してみたら興味を持ってくれたので直接その方とお話してみて下さい。とそのF社の方の連絡先を教えて下さったのでした。

ちなみにこのF社とはパン製造の会社ではなくパンの製造用機械を販売している会社でした。

こういうメーカーさんの営業の方は、最後はうちで機械を買ってよねって事で様々なお店の相談に乗り助言をしつつ、アイデアと自社商品を売る事でそのお店のお悩みを解決しているらしく・・・

無料相談って怖いな・・・何か買わされはしないだろうか?とも考えたが、もう考えてもしょうがないのでダメ元で早速!
そのF社の方にお電話をさせて頂き自分はこんな商品を販売しているのですが行き詰まっていて・・・という話をしたのですが、会話のやりとりでこの方がパンの製法に物凄く精通している事がわかりまして。

それはそうだ。今までに何十年もパン業界でパン屋さんのお悩み相談に乗っていた側の方なのだから。つまりはプロ中のプロです。

そして「象の耳」というパンを食べた事がない為に、いまいち味と食感の検討がつかず打開策の提案が出来ないとの事なので、それならば是非、御試食頂けないでしょうか!?と話しを進め、お会いする約束をして頂けました!

日本には無い独自の製法と思っているこのパンは、プロから見たらどうなのでしょう?

もしかしたら、あ!知ってますこの製法のパン!とか言われたらショックだな~とか思いつつ、その方にパクられたら嫌だから対策を考えたり色々しつつアポを頂いた翌週のその日を待つのでした。

つづく

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