その運命の相手は、屋台で売られていた
「エレファント・イヤー」という揚げパンでした。
(正確には、その揚げパンと出会った時には運命の出会いだ!と思った訳ではなかったのですが・・・)
揚げパンと言われると給食に出てきたコッペパンを油に浸したアレを思い出しますが、全然異なってまして・・・
その見た事もない食べ物に私は多大なる興味を示し早速注文しました。
注文するとお兄さんがこぶしより少し小さい位の丸い生地を取り出し、手で薄く伸ばしていき2~3分くらいかけて直径30cm位の楕円形にしたら油にドボンと入れて2分くらい揚げてました。
そして、きつね色になったらその生地を取り出しトッピングをつけて紙皿に載せて渡されました。
そこのお店では、シナモンシュガー、チョコソース、ラズベリージャム、ピーナツバターの中から選ぶ感じで2.5ドルです。
なるほど、薄く平べったくまるで象さんの耳のように大きいから「エレファント・イヤー」というネーミングなのかと納得。外はサクサクしていて、中は食パンのような食感でした、
目玉が飛び出る程ではなかったですが、確かに美味い!そう思いました。
<写真はピーナツバターのトッピングをしたエレファント・イヤーです。>
そしてポートランドではこれといった事もなく日々が過ぎ・・・高校時代の友人と次はいつ会えるんだろうな・・・なんてベランダで星を見ながら色々話したりしまして、NYへ飛び無事に帰国したのですが・・・
(本当は色々あったのですが、ロスで道を間違えまくった1日より最悪な経験は無かったので割愛します)
当時、ポートランドを発つ時は何もないこの地に来る事はもう二度とないだろう、そう思いこの地をあとにしたのですが・・・一ヶ月後にまたこの地に来るはめになるとは、この時の私は知るよしもありませんでした。
そして全財産を使い果たして帰国。
夢のように楽しかった一人旅が終わり、、、当たり前の事ですが強引に現実に引き戻されてしまいました。
気がつけば私は無職。職の宛など何もない無職。待ち受ける現実!!お金もない!職もない!
私は無職を良い事にゆっくりと考えました。
就職・・・バンド活動に支障が出る可能性大。却下。
う~ん、と考えがまとまらないとアメリカの思い出に浸っては現実逃避。
・・・してるうちにポートランドで見つけたあの変な揚げパンがなんとなく食べたくなり、どっかに売ってないかな~と検索。
ひっかからない。
どういう事?
そして色々調べると日本にあのパンはどこにも売られていない事が判明したのです。
って事はもし・・・・
あのパンを日本で自分が売り始めたら・・・
日本初??
日本初なら珍しいからバカ売れするんじゃないか!?
いやするでしょ!!
普通に働きながらバンドやるのと、
日本初の変な揚げパン屋で億万長者を目指しながらバンドをやるのだったら、どっちが人生面白いか!?
勿論、揚げパン屋なバンドマンでしょ!(どっちかが当たれば人生がもっと楽しくなるし!)
そして今やらなければ後で絶対に後悔するのも目に見えてるし!
数年後に他の人がエレファント・イヤーのお店を始めて行列が出来てたら悔しくて発狂するだろうし!
そう考えると今やらない理由が無く、もう顔はゆるみ始め・・・想像が暴走し、私はその時~宝くじに当たったような気持ちになり気分は既に億万長者になっていました。やっちゃう!?やっちゃえ!!
社長になろう!!即決。
そうなると・・・
まずあのパンが作れないと話になりません。
なので近所の本屋へ行き、まずはパンの作り方の本を購入。その本を見ながら斜め前にあるスーパーへ直行し本に出ていた材料(小麦粉、砂糖、塩など)を購入。
揚げる機械(フライヤー)は近所の家電量販店で一番安いのをキャッシングして購入。
フリーター時代に飲食店バイトでピザ生地は何度も作っていたので、原理はだいたい理解していたのですぐに作れるだろうと思っておりました。
ですが記憶を辿ってエレファントイヤーを作ってはみたものの全然おいしくない!
どうやったらあの生地は作れるのだろうか・・・!?
その後、無職をいい事に本屋、知り合い、ネット等~ありとあらゆる手段を使い3週間程作り方を探し試作を繰り返していたのですが、日本では誰も知らない食べ物なので当然、作り方に関しても誰も知りません。
本屋にもレシピ本などある訳もなく。
ネットでアメリカの英語サイトでレシピを調べると沢山出てはいたのですが、さすがアメリカ~同じ名前の食べ物なのになんで?って位にレシピというか材料自体がそもそもばらばらなのです。
それでも片っ端から作ってみたのですが似たような食感は作れず・・・
無職をいい事に家にこもり試食、試作、試食、試作・・・を延々、朝から晩までかれこれ1ヶ月・・・
何かが違う・・・。
増えていく借金(家賃に食費に光熱費→キャッシング)。
けっこう考えれば考える程、後ろを振り返れば振り返る程~地獄が待ってる訳です。(無職って案外、楽ではなかったです。)
しかし完成させる事が出来ない!!
なにが違うんだ~~!どうしたらいいんだ~!!
わあぅぁ~~~~!!
と発狂しそうになった時、ある名案がひらめいてしまったのでした。
つづく