2023.4.29 第3章~10話:象の耳、雑誌に出る。

ようやくお店と工場が完成し、スタッフも揃い!
グランドOPENを徹夜明けのまま迎える事になりました。

オープン時間になったので、どうせ暇だろ・・・と思いながら中からそっとシャッターを開けてみると、なんか50m程の大行列が出来てまして・・・

何かの間違いではなかろうか・・・
本当にこの行列はうちの店の行列なのだろうか?

嘘だろ、何かの間違いだろ・・・と思い行列の最後尾を見に行く途中に近所の飲み友達やよく行くお店の店員さん達まで混じってまして。

なんと有難い!!
でも9割以上はご近所の方々でした。

約二カ月の間、店の前で自分が一人でシャッターやキッチンカーに色を塗ったり、看板やお店を作ったりしていたのを通りすがりの皆さん、いったい何のお店が出来るのだろう~!?と首をかしげつつ眺めていたようで。

あと一か月前に「世界初製法のパン 象の耳 6/15(水)12時OPEN!」とでかでかと書きなぐった看板を掲示していたのが効いたようでした。

とりあえず並んで下さった方々にお礼を言いつつ、普通のパンと違ってすぐに食べる事を前提に作ってある事をくどい程に伝えて売りまくりました。
今と違ってこの時の生地は電子レンジでチンしても美味しくなかったんですよ。

なので、
出来れば今すぐここで食べてください、
持って帰るなら家に着くなりすぐ食べてください、
明日なんてもってのほか、
とにかくすぐ食べてください、
どうせなら帰り道に歩きながら食べてください、
お土産には不向きです、すぐに食べてください、
そんな販売方法でした。

食べて下さる方の健康を考え完全無添加なので硬くなるのが早いです!(当時は、です。今はお持ち帰りに対応して改良してありますが、それは後述)
できるだけ早く食べてください!

看板にそう書いても読んで頂けてない事も多いので、全員に必ず口頭で伝えるようにしていました。

それとキッチンカーの時もそうでしたが、ひそかに気を使っていたのが「音楽」です。
音楽には場の雰囲気を変える力があります。

無音だと静寂がうるさいと言いますか・・・
圧力が凄いんですよね。
もう苦痛でしかない。

なので幅80cmのカウンターですが小さくてレトロなラジオ風のCDプレーヤーがあったので入手し、営業中はずっとお客様の声が聞こえる程度の音量でエンドレスで音楽を流していました。

音楽は場の雰囲気を変えると先ほど書きましたが、べたな感じで記載しますと~
クラッシックを流せば高級で洗練された感じ、
ロックを流すと騒々しい感じ、
R&Bは落ち着いた感じ、HIPHOPは今風でイケイケな感じ、
JAZZを流すとお洒落な感じ・・・と、なんとなくですが多くの人々が持つべたなイメージの雰囲気に音楽は「場」を変えてくれます。

ここで自分の趣味のゴリ押しは当然控えました。
はじめはオルガン系の歌のないJAZZを流していましたが、なんかちょっと自分が作りたい雰囲気の感じと違うな・・・と思い、歌のないJAZZアレンジのブラスバンドの曲に変えまして。

でもよく聞くと誰もが知ってるアニメの主題歌なんですけどね。
ドラゴンボール、ちびまる子ちゃん、キャプテン翼、エヴァンゲリオンなど・・・
最初はなんか知らない曲が流れてる感じなんだけど、ん?なんかこのメロディ聞いた事あるぞ・・・あれ?これドラゴンボールじゃん!みたいな感じです。

歌が入っていると耳がそっちに持っていかれてしまい会話が成立しなくなるので辞めていました。

これは生地が焼けるまでの数十秒間を楽しんで頂く為にもひとやく買ってくれました。
そんな感じで自分なりに・・・ですが、いかにお客さんに楽しんでもらえるか、
こちらの主義のゴリ押しではなく出来るだけお客様の目線で考え、思いついた事はすぐに実行!

並んで待って下さる方々も、次は何が流れるんだろう・・・とお友達同士でイントロ当てクイズが始まってましたし(笑)
勿論、ちょっと後ろの方々には音が届かない程度の音量でしたが。(近所迷惑も考えて)

大行列が出来た場合は焦ったら負けです。
お客様にはこちらがてんぱったら、それはすぐに伝わってしまいます。
なので、楽しみながら!もうこんなに長い行列が出来てしまってはすぐにさばくのは無理なので、並んだ甲斐があった!と思って頂けるように逆に丁寧に!

以前に比べ16倍速く作れるようになったとは言え、多少の待ち時間は発生してしまうので極力無駄が発生しないように!お客様の順番にオーダーを聞くのではなくどんどん次のオーダーを聞くだけ聞いて、いかに効率良く焼くのが一気にまとめてお渡し出来るか瞬時に考え、効率性重視で回していきました。

そして、そんなこんなで無事に営業初日を終える事が出来たものの・・・正直こんなにお客さんが来て下さるとは思っていなかったので在庫がほぼゼロ!
明日のOPENまでに生地を作らねば!という訳で閉店後はそのまま生地製造を朝までやって仮眠して営業して・・・
みたいな日々を繰り返し、来客も落ち着いた一週間後位の事だったでしょうか。

お客様の中に「あの・・・こういう者なのですが・・・」とお名刺を下さる方が。

そのお名刺には「スターツ出版」(OZmagazine)って書いてあるじゃないですか!

で、お話を聞いてみると「metro.min(メトロミニッツ)」という都内の地下鉄の駅に置いてある大人気フリーペーパーに記事を掲載しても宜しいでしょうか!?との事。
しかも無料で!

なんて有難いお話!!

是非宜しくお願いします!と即答すると取材日とかの話になり、数日後・・・
数人の方がいらして写真撮ったりインタビューされたりで・・・・

その翌週にはあのメトロミニッツに弊店の記事が掲載されました!(今とはかなり色々と異なってます)

掲載されるとその反響でまた行列が出来まして。

そして掲載されてから数日後・・・

呼び鈴が鳴ったので製造の手を止め店に出ると・・・

「あの・・・テレビ東京の「朝はビタミン」という番組の制作会社の者なのですが、ちょっとお話を宜しいでしょうか!?」

当時は、奇跡だ!と浮かれまくっていました。その先に大きな地獄が待ち構えている事も知らずに。

<つづく>

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