2025.10.5 第3章~20話 美味しい食べ物と大量生産の関係性

店舗が増えていくのは喜ばしい事なのですが、お店がOPENすれば商品の発注がどんどん来るので当たり前の事ですがちゃんと商品を発送しなければなりません。
『製造が追いつきません』なんて言ったら怒られちゃいます。

徹夜して作ってでも加盟店にちゃんと生地を届けて、お客様に『美味しいね!』って喜んでもらいたい!
でも、象の耳って作り方が普通のパンと違うんです。
製法が世界初。これは嘘じゃないのですが、
世界初製法の商品を大量生産する機械なんて、当然この世には存在しません。

パンの種類の中には、食パンやあんぱん、カレーパン、クロワッサンなど、たくさんの種類があり、それぞれ作り方が異なるのですが全てを手で作っていたら大変なので機械の力を借りながら生産効率を上げて美味しいパンを何処のお店も作っている訳です。

生地を捏(こ)ねる機械はあるのですが(機械の方が力があり一定なので人よりも安定した商品が作れます)、その捏ねた生地を小分けして重さを測ったり、形を整えたり揚げたりするのは全て手作業なのでこれがまあ大変。
ず〜っと作りっぱなし。でもやらなければいけません!

そんな時に『OEM』(委託生産)なんていう方式を教えてもらえまして。
つまり他社のパン製造会社と契約して、他社のパン工場で象の耳を作ってもらって卸してもらったり、
そこの工場から直接加盟店へ発送してもらうやり方です。

契約関係が大変ですが、しっかりこれが出来れば弊社は『売る事』と『加盟店を増やす事』に注力できるので良いのですが・・・

でも他社に作ってもらう訳ですからレシピや作り方も教えなければなりません。

信頼できる企業さんじゃないとなかなか契約するのは戸惑ってしまいますが、
それ以前にこんなおかしな作り方の象の耳が他社に作ってもらえるのでしょうか?

でもこのまま手を打たないと生産がいずれ追いつかなくなるのは目に見えてます。
ならば早めに手を打たねば!

この時の選択肢は2つ。
1、OEM先を探し、生産は全て委託に切り替える。
2、他社に頼らずスタッフを増やして人力で生産量を増やす。


1の方が良さそうなので、この当時の人脈をフルに使い・・・(当時、ご協力くださった皆様、本当にありがとうございました!)
岩手県の大きなパン会社さんが手伝ってくださる事に!

何度も電話やメールで社長さんとお話しをし、
この方なら信頼できる!と思えたので直接、岩手の工場(東京ドーム2コ分のとんでもなく広い工場でした)まで伺い、機密保持契約書にサインしてもらえました。

製造面に関しては社長さんはノータッチなので、担当の方を紹介され以降はその方とやり取りをする事に。

担当の方とはじめての顔合わせの時、社長さんの離席後〜その担当の方と工場へ一緒に歩きながら製法などを説明していると、その担当の方の顔には
『めんどくさそうだな〜、これ以上仕事が増えるのは嫌だな〜』
って明確に書いてあったので嫌な予感しかしなかったのですが・・・

まずは生地が作れたとして、鍵となる〜
いつもの形に成形して→揚げて→秘密の製法を加えるまで
の途中まで、まずは肝となる箇所の直前までを本当に作る事が可能なのか、その確認から始めさせていただきました。

早速、作り方を途中までお伝えし(そんな作り方のパンは始めて!とここでも言われましたが)、途中まで作れるかを後日に実験してもらい、数日後にレポートが送られて来たのですが・・・

レポートを見てうちのスタッフ全員が一瞬で感じた事ですが、

『ここの人達、全く作る気がない。』

上からやれって言われたからとりあえずやったけど『仕事を増やしたくないから本気で取り組んでいない』というのがよーくわかる内容でした。

社長さんは凄く面白がってくださってたんですけどね・・・

それでも何回か修正案を送って試してもらったのですが、頭からちゃんとした商品を作る気がないようで・・・
『また失敗しました』
『残念ながら出来ませんでした』
『うちでは残念ながら無理のようです』

しか送られてこないのでこちらの会社は諦めました・・・

その後も何社かあたったのですが、どこも似たような結果となり、
委託生産は諦め自力で生産量を増やすしかない!という結論に至りました。
かなり落ち込みましたが考え方を変えて!
何処にも作れないのならばパクられる可能性も減った!と開き直りました。

もう自社製造しかない!

そうと決まれば求人広告を出し!面接!
アルバイトの方達を大量に増やして、生地の作り方を教えてどんどん生地を大量生産!

1品の物凄く美味しい食べ物を作るのも大変な事ですが、
1品の物凄く美味しい食べ物を、
『同じ味&同じクオリティー』
でたくさん作るのは簡単な事ではありません・・・

大量生産にして味が落ちたら意味がありません。

たくさん作って、たくさん売れれば(卸せれば)良いのですが〜
例えば、天候不順などで売れ残ってしまった場合や受注が来ない時、作り続ければ生地は余ってしまいます。
その余りが賞味期限を過ぎたら廃棄・・・
だからと言って生産を止めればアルバイトの方々が働けなくなってしまうので・・・それで辞められてしまっても今度は生地が欲しい時に困るので、働き続けてもらう為には作り続けてもらうしかありません。

そうすると廃棄しないで済むようにするには、賞味期限が長ければ長い程に廃棄しなくて済むので賞味期限が長い方が企業側は助かります。

なるほど!だから大きな企業さんが製造する商品には賞味期限を伸ばす為の添加物が必要になってくるんですね。

うちも使えたらどれだけ楽か。
でも添加物をふんだんに入れた商品<かつ大量に接種した場合はいずれ人体に影響が出るとわかっている添加物は特に>自信を持ってお客様には勧められません。

だから勉強して、人体に影響のある物は使用しない!という信念は曲げず、
味は落とさず、加盟店には供給を切らさないように!
機械による大量生産も出来ないなら知恵を使おう!


こうしてスタッフと自分が少しでも生地を作るのが楽になるように、
味は落とさず生産効率を上げる為に『象の耳がたくさん作れる道具の開発』に取り組みました。

みんなで、あーでもないこーでもないと議論しながら、いったい何個の道具を試作して失敗しては改善を繰り返した事でしょうか・・・
生地の改良回数は数えていたのですが、道具の改良回数は数えていないので何回繰り返したか覚えていないのですが、とにかく毎日生地を作りながら、

『どうやったら楽(らく)して作れるか?』
それだけを考えながら生地を作り続けました。

スタッフには常々『手を抜く事と頭を使って楽(らく)をする事は全くの別物』と伝えており、
頭を使って効率性を高めて楽(らく)をする事は全く悪い事ではなくむしろ大歓迎なので、
どんどんみんなで楽できる方法を考えよう!
そうやって少しづつみんなで知恵を出しあって生産効率を上げていく事で、
時間あたりの生産枚数が増えていき、増えた分はその分売上増加に繋がるので少しでもアルバイトの方々の時給に反映させる事でモチベーションを上げてもらっていました。

こうしてなんだかんだ言いながらも色々と大変でしたが、色んな事が少しづつ上手く進んでいました。


そして月日は流れ2011年3月11日

生地を製造中に突然!物凄い揺れが・・・

そう、後に『東北の大震災』と呼ばれるあの地震が起きたのです。

工場は油がこぼれた位で怪我人も出ず問題は無かったのですが、この後に日本中で起きた『自粛』で弊社はとんでもない大ダメージを受けたのでした・・・

<つづく>





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