2025.10.14 第4章~1話 ホームレスな日々のはじまり。

正直書きますと実はこの頃の記憶が・・・本当はあまりないのです・・・
壮絶すぎたので脳が消したがっているのか、なんなのか。

なので覚えている事を時系列に沿って書いていきますね。

死ぬ or 象の耳

という訳のわからぬ究極の2択の中から象の耳を選んだ自分には迷いが無くなり、自粛期間でも移動販売車で営業させてくれる場所を必死に探しました。

しかしそう簡単には見つかりませんでしたが何度も交渉を繰り返し、なんとか週に2カ所だけですが細々と営業できる場所を押さえる事が出来ました!

ではその営業していない時間、ホームレスは何をしていたかと・・・?

今思えばバイトすれば良かったのですが『吾輩はホームレスである』という認識があったので働かせてもらえるだろうか?という疑問が拭えず・・・(今思えば、履歴書の住所欄は会社の住所をしれっと書けば良かったのですが、それすら思い浮かばない程になんか追い詰められていたんですかね)

お客様用の生地を作る前と営業に出る前は銭湯へ行くとしても、それ以外の日は銭湯へ行くのも金銭的に厳しかったので大きなタライを買い、お湯をためて浸かる事で清潔を保っておりましたが・・・服も保管する場所が無かったので、部屋を引き払う時にほとんどを売ったり捨てたりしてしまったので外出できるような服も持ち合わせていませんでした。

週に2回の営業で、いかに売上を出せるか!?
その金額次第で自分の生活が、会社の運命が変わって来るので・・・

どうやったら沢山売る事が出来るだろうか?
・・・ですが、もうそんなの今まで散々悩んで実行してきたので、そう簡単には見つかりません。

どうやったらもっと美味しく出来るだろうか?
・・・それも今まで散々試行錯誤してきたので今さら案が浮かびません・・・

しかし時間は無限にあります。
テレビもスマホも新聞も無し!
世の中の動きはネットで仕入れるしかありませんでしたが、今から10年以上前なので当然ガラケーでしたしネットニュースもほぼ無く、世の中がどうなってるか全然わかりませんでした。
(外界との繋がりが完全に途絶えてしまうので携帯電話の支払いだけは死守してましたが)

テレビもスマホもお金も服も無いので外出も出来ない・・・
ほぼ牢屋にいるようなもんです。

目の前にあるのは水とパンの材料だけ。

そうなると、もうパンを作るしかやる事がない(笑)

散々研究しつくしたはずなのですが、まだ未開の領域があるかもしれないので・・・改めてパンを美味しくする為の研究を再開しました。

腰を据えてじっくり、材料の意味やどうしてこれとこれをこの順番に入れていたのか?
その意味と効能などを改めてネットを使って時間をかけて深く研究しました。

そんな事をずーーーーーっとやり続け、しまいには原子の足の数的にはこう混ぜた方が結合が強くなるからこの順番で材料を混ぜた方が良いのでは?みたいなとこまで踏み込み(今、思えばこの研究は大正解だったのですが・・・しかしまさか昔、受験で勉強した化学がこんな時に役にたつとは。)

腰を据えて本当に深く深く粉とか水の成分とかを原子レベルで研究していたら、まだまだ改良の余地がある事に気づけました。
化学を勉強していないと、これって気づけない事なのでは!?

そして仮説を立てては試作し試食。
仮説を立てては試作し試食。

過去にこれのやりすぎで身体を壊しましたが、前より餓死が身近すぎてそれどころではありませんでした。

でも何十回に1回のレベルですが劇的に美味しく進化させられた時があり、でもその喜びは誰にも伝えれられないので深夜に一人でガッツポーズしてました。

服もほとんど無いという現実と吾輩はホームレスであるという自己認識が外出する事を拒んでしまい、図書館で本を借りて読むという娯楽にすら怯えていました。

なのでずーーーーっと、もし影から自分を見ている人がいたら気が狂ってるんじゃないかと思われるくらいの時間、改善と試作と試食を繰り返していました。

正直に書くとその時の記憶はあまり無いのですが、仮説と改善を繰り返した記録だけは膨大に残っているので、たぶんこれは全て自分がやった・・・んでしょうね。
(後述しますが正確にには『残っている』ではなく『残っていた』でして・・・後に、生地を機械で捏ねながら寝落ちした時にこのノートを生地の中に落としてしまいびりびりに破けてしまい消失)

生地の改良をしていない時は他の仕事をし、やる事をやりつくして疲れ果てたら・・・なんせ娯楽がほとんど無いのでパソコンで海外のサイトに落ちている映画やアニメを見ていたような。
特に『鋼の錬金術師』というアニメにはまってました。(この時代にNetflixとかはまだありません)

そして改良を繰り返して生まれ変わったNEW象の耳を引っ提げて営業に出ては完売させて、売上を返済や支払いと材料購入費に回し手持ちはまた0円に。

こんな日々の繰り返しの中、ある夜に1本の電話が突然かかってきました。

まさかこの後、史上最年少で国家錬金術師の称号を得た天才、あの鋼の錬金術師に本当に会えるとは。

<つづく>

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